『博文館五十年史』(博文館, 1937年)
会社名
博文館
社史名
『博文館五十年史』
配架場所:千代田図書館「出版にまつわる本棚」
資料番号:130242266 請求記号:出版業/023ハ
社史紹介
会社紹介
越後長岡(現在の新潟県長岡市)出身の大橋佐平(1836年から1901年)・新太郎(1863年から1944年)父子が、1887(明治20)年東京本郷に興した出版社。専門的で高価な出版物が多かった当時にあって、一般向けの古典全集や『太陽』をはじめとする多様な雑誌を廉価で出版し、人気を博した。また、東京堂(書籍販売・取次業)・博文館印刷所(印刷業・のちの共同印刷)・博進社(洋紙販売業)など関連企業を次々と設立し、独自の生産流通販売網を確立するなど先見的な経営を行い、明治後期から大正期にかけて、「出版王国」と称されるほどの一大出版総合企業となった。 しかし、関東大震災で大きな被害を受け、雑誌『キング』の大日本雄弁会講談社(のちの講談社)や「円本ブーム」の火蓋を切った改造社ほか後進出版社の台頭などにより、昭和初期以降徐々に衰退、戦後 GHQ による公職追放・財閥解体の波のなか、1947(昭和22)年に解散、出版業本体は博文館新社・博友社に継承されることになった。
内容紹介
創業50周年を記念して編纂され、1937(昭和12)年に刊行。創業以来50年間の歩みを、日清・日露戦争や第一次世界大戦、関東大震災といった社会の動向とからめつつ、一年ごとに叙述。世相を巧みにとらえ次々と刊行される出版物や、博文館を支えた多彩な人材の動向などが詳述されている。創業者一族や東京専門学校(現在の早稲田大学)出身者のほかに、高山樗牛・大町桂月といった帝大卒文士や、田山花袋・巌谷小波らの硯友社同人の名前も見える。218頁にわたる「博文館出版年表」付。発行年順、単行・叢書・雑誌の各部ごとに、50年間の出版物が通覧できる。
著者坪谷善四郎(1862年から1949年)は、博文館の黄金時代を支えた編集者。越後加茂(現在の新潟県加茂市)出身で、東京専門学校在学中の1888(明治22)年博文館に入館、執筆・編集に辣腕を振い、編集局長や取締役をも歴任した。1917(大正6)年に博文館を退き、大橋父子が設立した私立公共図書館である大橋図書館の第2代館長となり、1944(昭和19)年までその職にあった。東京市会議員として市立図書館設置に奔走し、日本図書館協会会長に就任するなど、出版界・図書館界双方で出版文化の普及に尽力した。水哉の雅号を持つ歌人でもあり、写真撮影を得意とするなど多才の人で、多くの著作が残されている。
内容注記
【図版】
巻頭:
・館主大橋新太郎の揮毫
・幹部社員・功労者の写真
・新旧社屋の写真
・創業者一族の写真 など
本文中:
・各種出版物の写真など多数
【付録】
・巻末に「博文館出版年表」あり
関連文献
- 坪谷善四郎『大橋佐平翁伝』(栗田出版会、1974年)
- 坪谷善四郎『大橋新太郎伝』(博文館新社、1985年)
- 浅岡邦雄「長岡における大橋佐平・新太郎父子の出版活動」(『日本出版史料』8、2003年)
- 稲川明雄『龍の如く― 出版王大橋佐平の生涯』(博文館新社、2005年)
- 坪谷善四郎『大橋図書館四十年史』(博文館新社、2006年)
- 田村哲三『近代出版文化を切り開いた出版王国の光と影 ― 博文館興亡六十年』(法学書院、2007年)