内田嘉吉文庫

内田嘉吉文庫について

内田嘉吉の写真

内田嘉吉氏(うちだ・かきち 1866から1933)は、明治・大正期に逓信省で日本の海事行政に関する法律の整備などに尽力し、また台湾総督として植民地行政にも携わりました。後には貴族院議員や私立東京商業学校長、日本無線電信株式会社長を務め、工業振興、社会教育、通信インフラの分野でも実績を残しました。

内田嘉吉文庫は、内田氏の蔵書約16,000冊を、氏の没後、昭和9年に当時の東京市駿河台図書館(千代田図書館の前身)が受託したもので、平成23年11月、日比谷図書文化館4階 特別研究室に移転しました。これらの資料は、日比谷図書文化館 特別研究室で、直接手にとって閲覧や研究にお使いいただけます。

内田嘉吉文庫における特徴的な6つの資料グループ

1 西洋の冒険書や旅行記

中世末から16世紀の西洋の古地誌と航海記を網羅する大叢書「ハクルート叢書」第1期刊行本の100冊がほとんど揃っています。その他、地図や挿絵が豊富なキリシタン本、探検記、航海記、地理書など、革装の大型洋書が多数あります。

2 西洋からみた日本

ケンペル「日本誌」 、シーボルト「日本」、ペリー「米艦隊日本遠征録」などの原著のほか、16世紀から幕末・明治期に来日した西洋人達の著作物・翻訳本が網羅的に所蔵されています。

3 政府刊行物・各種調査資料

内田嘉吉の国内外における幅広い活動を反映する、明治から昭和初期にかけて日本で出版された種々の国政資料、植民地行政資料、外交関係資料、都市計画、工業振興、通信インフラ等諸分野の調査資料や刊行本が数多く所蔵されています。

4 伝記・人物研究書

内田嘉吉の幅広い人脈を裏付けるように、明治から昭和初期にかけての政治家、実業家、華族、軍人、学者、さらに皇室関係者に至るまで、伝記、回顧録などがあります。また、セオドア・ルーズベルトや孫文、ガンジーなど、欧米、アジアの政治家の伝記、著述本も豊富です。

5 内田嘉吉の著作

内田嘉吉の著作・翻訳本や講演・視察報告が多数所蔵されています。

6 その他の所蔵資料

「万延元年遣米使節図録」や「米欧回覧実記」など、幕末・明治期の日本の使節団の記録や、「群書類従」や「心学叢書」、「貞観政要」、「武備志」など数多くの和漢書が所蔵されています。そのほか、諸外国の写真帖や19世紀の有名な旅行ガイドブック「Baedeker」シリーズなど、海外の地理書・旅行本が豊富です。

内田嘉吉文庫を検索する

約16,000冊すべての蔵書がデータベース化され、ホームページ上で調べることができます。一部の資料は資料画像を見ることができます。

資料の複写、引用掲載について

資料の複写は原則的にお断りしておりますが、著作権の切れている資料のみ、お手持ちのカメラによる撮影が可能です。

資料の撮影、または出版物・放送メディア等での使用掲載を希望される場合、所定の手続きが必要です。特別研究室受付スタッフにご相談ください。

内田嘉吉の略歴

西暦 和暦 略歴 日本と世界の動向
1866 慶應2 10月12日、江戸神田に生まれる
1884 明治17 東京外國語学校独逸語科卒業
1891 明治24 帝國大学法科大学法科卒業逓信省に奉職し、主として海事行政に携わる私立東京商業学校で法律を講義石島リン子と結婚
1893 明治26 長男・誠が誕生
1894 明治27 日清戦争(1895年まで)
1901 明治34 逓信省管船局長に任ぜられる
1904 明治37 日露戦争(1905年まで)
1906 明治39 7月から12月、南満州鉄道設立委員会委員に就任
1910 明治43 台湾総督府民政長官に就任(1915年まで)
1914 大正3 『国民海外発展策 附太平洋における独領植民地』刊行 第一次世界大戦勃発
(1918年まで)
1915 大正4 『国民保健論』翻訳刊行12月、南北アメリカ大陸を視察(翌年6月まで)
1916 大正5 『安全第一』初版刊行
1917 大正6 逓信次官に任ぜられる都市研究会を設立し、副会長就任(会長は後藤新平)第1回化学工業博覧会を開催し、化学工業協会会長に就任蒲生俊文らと安全第一協会を設立し、会長に就任『逓信事務と安全第一』刊行
1918 大正7 逓信次官退官、貴族院議員に勅撰(1933年まで)
1919 大正8 私立東京商業学校長に就任『安全第一生活法』刊行
1920 大正9 国際労働総会に日本政府代表として出席大日本少年野球協会会長に就任 国際連盟成立
1922 大正11 東京連合少年団副団長に就任(団長は後藤新平)
1923 大正12 台湾総督に就任(1924年まで) 9月、関東大震災発生
1925 大正14 日本無線電信株式会社設立、社長に就任(1933年まで) 普通選挙法・治安維持法成立
1927 昭和2 日本海員掖濟会理事長に就任
1931 昭和6 『南洋』翻訳刊行 満洲事変勃発
1933 昭和8 1月3日病死・享年68歳(叙正三位)

内田嘉吉文庫関連リンク集

内田嘉吉とその蔵書をもっと知りたい方におすすめのWEBサイトを紹介します。(五十音順)

内田嘉吉文庫にある『米欧回覧実記』の著者である歴史家・久米邦武と息子の洋画家・久米桂一郎父子の業績を伝える美術館です。

内田嘉吉に関する新聞記事資料を検索・閲覧できます。

内田嘉吉に関する公文書資料が多数収蔵されており、Web上で検索・閲覧できます。

内田嘉吉の著作や関係資料を検索・閲覧できます(一部の資料は館内閲覧のみ)。

大正期、三井・三菱を凌いだ総合商社・鈴木商店の歴史と遺産を伝えるWeb博物館。日本の近代産業史や、内田嘉吉と鈴木商店との関わりについても紹介されています。

サイト内の「台湾総督府職員録系統」で、台湾総督府の毎年の職員録を、職員名で検索・閲覧できます(検索入力には「中国語(繁体字)」の入力環境が必要)。

帝国議会の議事録から貴族院勅選議員・内田嘉吉の発言が検索・閲覧できます。

2014年に行った内田嘉吉文庫の修復事業で、同倶楽部の製本家が修復を手がけています。製本家や修復家をはじめ、本づくりに関心を持つすべての人々が集まり製本に関する情報交換を行う交流の会です。

公益社団法人温故学会が運営する塙保己一史料館は、江戸期の盲目の学者・塙保己一の業績を伝え、『群書類従』の桜の版木を保管しています。内田嘉吉文庫の『群書類従』は、ここで大正期に刷り立てられた限定157部の1部で、「光栄記念」の印が捺されています。

代表・泉三郎氏を中心に、岩倉使節団と『米欧回覧実記』に関心を抱く人々が集まり、歴史に学び、現代の諸問題について世代を越えて語り合う会です。

アメリカ視察中の内田嘉吉の写真をWebアーカイブで閲覧できます。

日本における台湾研究の拠点として設立された研究所です。一般の方でも参加できるワークショップを開催しています。